何のための知識シリーズ2
眼は何のためにあるか
山田宗睦ほか共著
発行:風人社
仕様:四六判/上製本/ 258頁
定価:本体2300円+税
1990年2月10日発行
表紙絵「眼のある風景」(雲愛光、1938年)東京国立近代美術館蔵、原画より右一部カット
ISBN9784-938643-02-7 C0347
★日本図書館協会選定図書
全日本聾唖連盟推薦図書
人はすべてを見ているようでいて、実は、人の心のひとかけらさえ、見えにくい、という人間の寂しさ。眼は、いかに人間的な眼となるか。
哲学・医学・工学・映像・民話・「障害を通 した」視点など、ふだん意識しない「眼とは何か」を多角的に問いかける。
眼もまた、その生理のメカニズムの不思議さに驚嘆せずにはいられない。例えば、本を読んでいるときの眼の動きは、停留一跳躍一停留を1分間で180回、1秒間に3回の繰り返しを行っているという。また、跳躍時に生じる流れ網膜像の処理のために、1秒間に3回も開閉するシャッター機能が眼にあるとは、驚かされる。
視覚メカニズム研究の専門家と身近な眼の臨床医師の共同執筆で、眼の不思議の世界をやさしく紹介。
「機械の眼」では、コンピュータによる視覚情報認識の基本について触れた。テレビ報道記者からドキュメント担当となった筆者の目に見えたものは何か。
また、「障害を通して考える」では、社会で活躍する二人の視覚障害者と視覚障害児教育に詳しいジャーナリストに寄稿を願った。一般 雑誌のほかに「点字ジャーナル」「点字毎日」などでも紹介され、点字翻訳、テープライブラリー(音読)が作成された。
く障害者問題がごく自然に統合されていて、<障害者間題に関心がなく別の意図で買い求めたとしても、本の中で障害者の問題に触れることにより関心が高まる>(村井潤一京大教授)。
特に高校生や大学生にも本書を勧めている。
本書の目次
<口絵> 「眼底写真」(眼底カメラ撮影・金子貞夫)
「色の不思議」
1 眼の意味を考える……山田宗睦
2 眼の生理・眼の知覚……池田光男・池田幾子
プロローグ/眼球の構造のあらまし/眼は光を通さねばならない/網膜に像を作る/ 水晶体で焦点の調節/近視?遠くが見にくい/遠視?近くが見にくい/老視?固定焦点の眼/ 網膜のしくみ/中心窩?網膜中心重点主義/どんな明るさにも順応する眼/夜と昼の二重構造の眼/ 色の知覚のしくみ/眼球はどのように動くか?/視野の広さはなぜ必要か?/ 視野狭窄?視野の狭くなる病気/見る機能は獲得されねばならない(先天盲の症例)/エピローグ
3 わが心の映像~TVドキュメント取材の眼~……佐々木征夫
私の映像への想い/信州・平谷村との出会い/鈴木茂子さんとの出会い/映像に夢を、目に感動を
4 障害を通して考える
■盲人・二つの不自由……本間一夫
盲人の不自由とは/読書の不自由とその対策/歩行の不自由とその対策/むすび
■わたしの目……川島昭恵
はじめて目にした闇/こんな場合が不便/恵尾が「津軽」の出演/わたしなりに見えるもの
■多様な視覚障害児の教育~地域で学ぶ統合教育を中心に~……高橋秀治
盲学校の役割/見えなくとも地域の学校で学びたい/見えないことをどう補うか/教育にはいろんな道があっていい
■聴覚障害者にとっての視覚情報の重要性……森壮也
視覚世界への入口/ろう者の視覚/アメリカの手話言語観/視覚優位の教育/手話と視覚
5 昔話に語られた「目」……中村とも子
口承文芸の担い手としての目の見えない人/始祖伝承と昔話にみる意識の落差/ 「目」の登場する日本の話/蛇女房?目の玉型/蛇女房?目の玉型の日本での分布/ 蛇の目玉の呪物としての定着性/荒ぶるカミと矯められたカミ/昔話に「まなざしの愛」を見る
6 機械の眼……富田文明
機械の眼はなぜ必要か/機械の眼は何を見ているか/色の知覚/テクスチャーの知覚/形の知覚/ 距離の知覚/立体の知覚/動きの知覚/機械の眼はどのように画像を理解しているか/物体のモデル/ 概念の学習/機械の眼をどのように利用し、応用しているか